ことば置き場

物語をめぐり、言葉をめぐり、それから。

詩集# 捨てる

君はこれまで  いくつの  名を  捨てただろう

僕はこれまで  無数の名たちを  捨てた

名は確かに  確かに  誰かの歴史に刻まれていた

雨粒が紫陽花の葉を湿らせ

君のくちびるを湿らせたように

名は誰かの耳朶を湿らせていた

記憶せよ  と命じたものは  もう立ち去った

失われし信仰と星座の気配よ

花弁のように  無名のアスタリスクたちが舞う

君はそれに  愛と名付けた

僕はそれに  罪と名付けた

なぜなら僕はそのように呼ばれ続けてきたから

呼ばれ続けるコトで名付けの瞬間を忘れられた

名付けの起源は散るアスタリスクみたいに

硝子の平面に貼り付き  捨てられ続ける

失われし信仰と星座の気配よ

罪と呼ばれ続けた僕はもうすぐ捨てるだろう

愛と呼ばれ続けた君がその名を捨てたように

そうだ

捨てる

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