ことば置き場

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安曇野 #3 森の中ではー絵本美術館にて

安曇野 #3 森の中ではー絵本美術館にて

  一昨日の午后、自転車で遠くまで走ってみようと思った。穂高温泉郷に向かって、まっすぐ緩やかな勾配を上ってゆく。ママチャリだと結構キツイ。

   先刻まで晴れていたはずなのに、急に雨雲が広がる。山の匂いがしだいに近づいてくる。目指していた美術館は閉館中だった。調べてから来るのだったな、とちょっと後悔してから、以前行ったことのある美術館のことを思い出した。

   山裾をまっすぐ、松川村の方角へと北上していけばいいはずだ。今回は自動車ではないので、多少の躊躇はあった。ところが、足が勝手にペダルを漕ぎ始める。まあいいか、漕ぎだした船だ。

    アップダウンがけっこうあり、これもまたキツイ。歩道が狭く、なんどもトラックに弾き飛ばされそうになる。無心で走った末、ようやく目的地に到着した。

    森の中に、その絵本美術館はあった。同じ敷地に〈森のおうち〉というコテージが隣接する。ちょうど「いろんなのりもの絵本原画展」を開催中で、柿本幸造とコヨセジュンジの作品が展示されていた。

    ジャズピアノが小さく流れる館内はとても居心地がよく、リラックスした気分で観覧できた。救急車、消防車、パトカー、タンクローリー、ショベルカー……。はたらくくるま、というのは子どもにとっていつの時代も憧れで、自分が幼い頃に見た夢を思い起こさせる。

   僕が注目したのは、なかがわちひろ/文、コヨセジュンジ/絵『おたすけこびととハムスター』だ。ハムスターの回し車を小人が作るのだが、なかがわ氏は実際に実物を作ったという。その実物木製回し車も展示されており、けっして想像だけの産物でないことが分かる。子ども向けであっても、ウソがあってはいけないのだ。ディテールのリアルな追求が、作品を素晴らしいものにしているのだと思う。

    森の中では、本当に小人たちが住んでいて、動物たちと力を合わせて今日も何かを作っているのかもしれない。そんな気がして、家路についた。

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