ことば置き場

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安曇野 #1 山茱萸の黄色と

安曇野 #1 山茱萸の黄色と

    家族の見舞いがてら、ひさしぶりに安曇野に帰省する。大糸線の豊科駅を降りると、まだ肌寒い。上空に強い寒気が流れ込んでいて、今日は全国的に寒いらしい。

    少し雲で霞んでいるが、常念岳をはじめ、アルプスの山々はそれぞれ個性的な白い帽子をかぶり、きれいだ。やはり、寒さのなかで屹立する山の稜線を眺めるのもいい。東京で澱のように溜まった怠惰な精神が、瞬時に浄化されるようだ。自然に背筋が伸びる。

    畦道を歩きながら、春を探してみる。

    芝桜などはもちろん、まだまだだが、あったあった。フキノトウは美味しそうだ。山茱萸サンシュユ)の花も黄色に、色づきはじめている。花序はまだ小さいが、これからどんどん明るくなるだろう。

    山茱萸の木の根方に目を移すと、福寿草が肩を並べて、これもまた同じように黄色い花をつけている。山々のうえから射し込む光にむけて、お辞儀をしているように見える。謙虚だ。

    寒い。しかし、時間は刻々と進んでいる。よほどの天変地異がない限り、春は予定通りやってくるだろう。それは、人のつくる予定よりも少しだけ、確かだ。自然もたまに、ヘソを曲げることがあるから、あくまでも、少しだけ。

    夜、嘉門次という上高地の酒を呑みながら、うとうとと、春の行方を夢想する。明日は少し、自転車で遠くまで行ってみよう。

 

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